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繰延資産の取扱い

1.会計上の繰延資産
企業会計原則では、繰延資産は①すでに代価の支払が完了又は支払義務が確定し、②これに対応する役務の提供を受けたにもかかわらず、③その効果が将来にわたって発現するものと期待される費用、をいいます。ただ、その効果の発現と期間が不確実であることから、企業会計原則では繰延資産は「創立費」、「開業費」、「開発費」、「株式交付費」、「社債発行費等」の5つに限定されています。

繰延資産は換金性がなく、法律上の権利もない、実態を伴わない資産である特徴があるので、支出をしたときに一括経費計上することが原則です。
ただ、これらの費用を繰延資産として資産計上することは認められており、償却方法は無形固定資産と同様に、残存価額をゼロとする定額法で行われます。資産計上した場合でも、企業会計原則では「創立費」は会社成立後5年以内、「開業費」は開業後5年以内、「開発費」は支出後5年以内、「株式交付費」は交付後3年以内、「社債発行費等」は償還期限内で償却することが求められます(税法上は随時償却が可能です)。

2.税務上の繰延資産
法人税法では、税法固有の繰延資産が規定されています。これは、適正な期間損益計算を行うことによって法人間の課税の公平を保つことを目的に定められており、次のようなものがあります。

(1)公共的施設の設置又は改良のために支出する費用
これは、法人が自己の必要に基づいて行う道路や堤防などの施設や工作物の設置又は改良を行う際に要する費用や、国などが行う公共的施設の設置などによって法人が著しく利益を受けるためにその設置などに要する費用の一部を負担したものなどをいいます。

(2)共同的施設の設置又は改良のために支出する費用
これは、法人が所属する協会や組合、商店街などが行うアーケードやアーチなど共同で使用する施設(共同的施設といいます)の建設や改良に要する負担金をいいます。ただし、その共同的施設の相当部分、協会などの本来の用以外に供されるときは、その部分に係る負担金は協会などに対する寄附金になります。

(3)資産を賃借するための権利金等
これは、建物を賃借するために支出する権利金や立退料などの費用をいいます。ただし、建物の賃借に際して支払った仲介手数料は、支払った日の属する事業年度に損金算入することができます。

(4)同業者団体等の加入金
法人が同業者団体などに対して支出した加入金は、繰延資産とされます。ただし、その同業者団体等の構成員としての地位を他に譲渡することができることになっている場合の加入金や出資の性質を有する加入金は、その地位を他に譲渡するときや、その同業者団体などを脱退するまで損金算入できません。

3.繰延資産の償却限度額
創立費や開業費などの会計上の繰延資産は、企業会計原則において一括経費計上することが原則とされていますので、税法も期末現在の繰延資産の額の全額が償却限度額になります。

税法固有の繰延資産については、以下の表のように償却期間が定められています。
【表1】

種類

細目

償却期間

公共的施設等の負担金

公共的施設の設置又は改良のために支出する費用

(1) その施設又は工作物がその負担した者に専ら使用されるものである場合 その施設又は工作物の耐用年数の7/10に相当する年数
(2) (1)以外の施設又は工作物の設置又は改良の場合 その施設又は工作物の耐用年数の4/10に相当する年数

共同的施設の設置又は改良のために支出する費用

(1) その施設がその負担者又は構成員の共同の用に供されるものである場合又は協会等の本来の用に供されるものである場合 イ 施設の建設又は改良に充てられる部分の負担金については、その施設の耐用年数の7/10に相当する年数
ロ 土地の取得に充てられる部分の負担金については、45年
(2) 商店街等における共同のアーケード、日よけ、アーチ、すずらん灯等負担者の共同の用に供されるとともに併せて一般公衆の用にも供されるものである場合 5年(その施設について定められている耐用年数が5年未満である場合には、その耐用年数)

資産を賃借するための権利金等

建物を賃借するために支出する権利金等

(1) 建物の新築に際しその所有者に対して支払った権利金等で当該権利金等の額が当該建物の賃借部分の建設費の大部分に相当し、かつ、実際上その建物の存続期間中賃借できる状況にあると認められるものである場合 その建物の耐用年数の7/10に相当する年数
(2) 建物の賃借に際して支払った(1)以外の権利金等で、契約、慣習等によってその明渡しに際して借家権として転売できることになっているものである場合 その建物の賃借後の見積残存耐用年数の7/10に相当する年数
(3) (1)及び(2)以外の権利金等の場合 5年(契約による賃借期間が5年未満である場合において、契約の更新に際して再び権利金等の支払を要することが明らかであるときは、その賃借期間)
電子計算機その他の機器の賃借に伴って支出する費用(8-1-5(2))  

その機器の耐用年数の7/10に相当する年数(その年数が契約による賃借期間を超えるときは、その賃借期間)
役務の提供を受けるための権利金等 ノウハウの頭金等  

5年(設定契約の有効期間が5年未満である場合において、契約の更新に際して再び一時金又は頭金の支払を要することが明らかであるときは、その有効期間の年数)
広告宣伝用資産を贈与した費用 広告宣伝の用に供する資産を贈与したことにより生ずる費用  

その資産の耐用年数の7/10に相当する年数(その年数が5年を超えるときは、5年)

その他自己が便益を受けるための費用

スキー場のゲレンデ整備費用  

12年
出版権の設定の対価  

設定契約に定める存続期間(設定契約に存続期間の定めがない場合には、3年)
同業者団体等の加入金  

5年
職業運動選手等の契約金等  

契約期間(契約期間の定めがない場合には、3年)

(出所:国税用ホームページ)

償却限度額は、次の算式より計算した金額になります。また、その支出した費用の額が20万円未満の場合は、全額を損金経理することが認められます。
≪算式≫
償却限度額=支出した費用の額×その事業年度の月数(注)/支出の効果が及ぶ期間の月数
(注)支出する日の属する事業年度は、その支出する日から事業年度終了の日までの月数(1月未満の端数は1月)

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